土質改良機の利用方法は今まで利用経験のない方には馴染みが薄いかと思われますが、どのように使用されているのでしょうか。
重機・建機の中には、特別な作業に特化して使われるものが多くあります。
自走式土質改良機は主に高速道路の建設工事や埋め立て、再開発、高速道路建設現場、それに港湾・河川の浚渫(しゅんせつ)工事や土壌の改良工事などで見ることができますね。中京重機のある愛知県では、伊勢湾の護岸でよく使われています。
そうですね。浚渫工事では主に水中から掘った土から水分を抜き、そのまま埋め立てできる土に改良するのに利用されているようです。自走式土質改良機は、工事で発生した土砂に「石灰類」や「セメント類」の添加剤を混ぜ合わせ、環境に配慮した再利用可能な土にリサイクルする用途によく使われています。
工事で発生した排出土を再生した盛土を使えば、廃土の廃棄場所がいらないし、盛土を掘らなくてもよくて都合が良いのです。トラックでの運搬作業も最低限でよいですしね。
それ以外に、窯業のお客様で焼き物に使う土を混ぜている方もいました。
自走式土質改良機は、いってみれば動くプラントのようなものだから、リサイクル機械としてだけでなく、他にも転用するポテンシャルは十分にありますね。
実際、汚泥などの土壌改良等を扱う産業廃棄物業者さんの場合、自走式土質改良機を固化材サイロと組み合わせて定置化させて利用されている事例もあります。
オペレーターの経験値が再生土の完成度を左右する
自走式土質改良機のオペレーションは難易度が高いと聞きました。
自走式土質改良機は、専門性の高い重機ですが、構造自体はそれほど複雑ではないですよね。
その反面、改良した再生土の質は現場の職人さんのノウハウやスキル次第な部分があるので、自走式土質改良機のオペレーションには簡単な操作方法のマスター以外にも専門的な技量が必要になるといえます。
メーカーが想定した自走式土質改良機のポテンシャルをしっかりで発揮させるには、作業前の混合機のセッティングに始まり、生産後の改良された土の品質管理までいろいろなノウハウや経験が必要ですしね。
一言で言うと、原料土に固化材を混ぜて再生土に改良する作業ですが、現場によって原料土の土質や含まれている水分量などは異なるし、加えて原料土をどんな状態に改良するか、どのような用途に使うかによって、使用する固化剤の種類や量も変わってきます。
キャリブレーションを行って、土質改良機のセンサーにコンベアを流れる土の量に対して固化材の添加量の設定をするのは想像以上に難易度が高いですね。
何度もキャリブレーションを繰り返して固化材の混合比の微調整をするのは、意外と大変な作業です。
再生土は利用方法などによって自治体ごとの規制をクリアする必要がありますし、固化剤の添加量などの記録を自治体に提出する義務がある場合もあるので、固化材配合の履歴を蓄積する記録用プリンターが装備されていることが多いですね。
土質改良機って、混合機本体は比較的シンプルな作りなのに、オペレーションについてはセンサーや操作、調整に対する繊細さが本当に必要となりますね。
自走式土質改良機の主流「日立建機」と「コマツ建機」の違い
自走式土質改良機に強いメーカーはどのようなメーカーでしょうか?
自走式土質改良機のメジャーなメーカーといえば日立建機とコマツ建機ですね。
そうですね、中京重機でも取り扱い実績が高いのは、日立ならオレンジカラーのSR-P1200、SR-G2000、SR2000G。コマツなら黄色いカラーでBZ120、BZ200、BZ210-1 G-MODEあたりをよく扱います。
土質改良機でも日立製機械とコマツ製機械では、原料の土を攪拌する方式は大きく異なります。それぞれ得意な現場・用途・土質が異なるので、どちらを使うか検討が必要になってきますね。
日立建機の機械は、混合室の中でシャフトが2本異なる方向に回転することで、取り付けられたパドルが固化剤と原料の土を混ぜ合わせます。処理量も多いのですが、生産する改良土はよく攪拌されて良質です。反面、土の中に砂礫が混入すると摩耗が激化するので、耐摩耗パドルの取り付け等の対策が必要になります。
ホッパーの中に固化材を入れるのですが、ジャバラで伸縮自在なので、運搬時は縮ませることもできるのが特徴ですね、ただしホッパーが縮んだ時についた固化剤が固まると、破れてしまうこともあります。
掘り出した土の投入用のベルトコンベアがゴム製なので、かなり激しく原料土を入れると摩耗や偏りが出てしまいますが、交換は比較的簡単です。
コマツ建機製品の混合機は回転するカッターが原料土を切りながら、ハンマーが回転して固化剤を叩き込んで混ぜていく方式をとっていますね。
排出直前にもう一度土を切り混ぜるアフターカッターがついている機種もあります。サイズの大きな土の塊が入っていても切り崩して混ぜることができるので、作業前の処理が軽度な作業で済みます。特にG-MODE付は作業量が大きく向上しますね。ただし、混入している石の除去をきちんとしないと、混合室を壊しやすいです。
固化材ホッパーは鉄製の取り外し式です。背が高いので回送時は取り外しが必要です。でも鉄製なので丈夫で壊れた場合も修理は比較的容易です。
また、ベルトコンベアも鉄製なので衝撃や摩耗に対して強靭です。その反面、固着や摩耗の際には修理費が高額になる可能性があります。
特徴比較だけ言うと、日立建機の土質改良機は粘土質の土や水分の多い土が得意で、コマツ建機の土質改良機は土の塊が混ざりやすい原料が得意です。とはいえ、コマツのG-MODEで含水率の高い原料土の浚渫現場改良をしている現場とか、ロールクラッシャーで1次破砕した後ワンオフ製作スクリーンを日立SR-Gシリースに搭載して解体廃材ガラを処理している現場もあります。
これらの自走式土質改良機の現場ノウハウは、現場経験が豊富な重機のレンタル会社に情報が多く蓄積されています。そのため、導入を検討しているユーザー様は、まずはやりたい仕事を専門性の高いレンタル会社に具体的に相談して、オペレーター付で土質改良機をレンタルするのも一つの方法といえます。
ところで、海外では土質改良機はどのように使われているのでしょうか?
海外に目を向けると、韓国では主に住宅造成工事の現場で利用されています。住宅建設ニーズの高まりに応えるため、ソウルなどの大都市近郊では宅地造成が行われていますが、地盤がとても軟弱で沼地や湿地が多い沿岸部の現場が多いのです。
そのため、行政の指導の下で土壌改良が行われていますが、韓国メーカーの土質改良機がないため、日本製の土質改良機が導入されています。
実は、日本製の土質改良機の正規輸出入ルート、つまり新車の輸出ルートがないため、我々をはじめとした中古機械商社が仲介することが多いです。
買取・修理・販売(貿易)の各局面で韓国のユーザーまで直接機械を供給していますが、改良する土壌の粘土質が多いためか、韓国では日立のパドルミキサー式の機械が好感触を得ています。韓国で改良する土は粘土質なのでしょうか、「日立SR-G2000最高!」の評価を得ています。
導入後の問題が起こる場合、韓国ではノウハウが蓄積されていないために、メンテナンス対応で日本から出張修理に向かうこともあります。
また、オーストラリアでは、自走式土質改良機を軟弱土の改良ではなく、汚染された土壌の改良に利用しています。
住宅建築時に土壌検査が必要なオーストラリアでは、酸性度が高い土地には建設許可が下りないため、土質改良機を使った土壌改良のニーズがあります。
土質の硬化が目的の日本国内では、土質の改良に固化剤としてセメント系や石灰系の物が使われますが、オーストラリアでは酸性土の中和が目的なので、日本とは違った独特な配合の添加物が利用されているようです。
カナダからも汚染土の土壌改良用に土質改良機を希望される方がいらっしゃったり、英国に土質改良機を輸出したこともあります。
海外で土質改良機を生産しているメーカーのことはあまり聞かないので、自走式土質改良機は日本独自の重機なのかもしれませんね。
新車を買う場合
それでは、土質改良機を入手する際の注意点を教えてください。まずは新車を検討される方も多いでしょう。
新たに自走式土質改良機を現場に導入しようとする方にとって、検討される手段は1.新車の購入、2.レンタル、3.中古車の購入の3通りありますね。
新車購入の良い点は、車両が新品のため、故障や不具合などの心配も少なく、保証期間内であれば修理コストも低いことです。
当然新車は導入コストが高いですが、必要なくなったあと、中古重機として売却すると高額で買取される可能性があります。
例えば人気車種の日立建機SR2000Gやコマツ建機BZ210-3ですと、稼働時間が5000HR以上でも1000万円以上の査定結果が出る場合もありますね。
自走式土質改良機は、メーガーの月別生産台数が3~4台のため、受注生産とほぼ同様の状態です。そのため自動車のようにディーラーが在庫を保有していることがほとんどありません。結果として、新車は納車まで時間がかかってしまいます。
一般的に2、3カ月~半年程度かかります。モデルチェンジなどの時期が重なると1年ぐらいかかることもあります。
メーカーに在庫がない場合、工事の開始に自走式土質改良機の納車が間に合わないリスクがあるので、新車で購入する場合は、購入コストの他に納車時期が工事開始日に間に合うか、しっかり確認する必要があります。
レンタルで導入する場合
レンタルした機械を現場に導入する場合はいかがでしょうか?
レンタルで自走式土質改良機を導入する場合、専門レンタル業者が自走式土質改良機を保有しているならば、すぐにレンタルし現場に投入できます。専門レンタル業者は修理・整備面でもノウハウがありますので、状態の良い機械が利用できます。
しかし特殊さ故に、自走式土質改良機の取扱いがあるレンタル会社は希少です。
自走式土質改良機は、工程が最低でも数か月なので、貸出機が出払っていて確保することが困難な場合があります。
レンタル料は標準的な油圧ショベル等と比べると割高に設定されていることが多いです。そのため、短期の利用であれば良いのですが、1年以上使用するとレンタル料+修繕費+損耗費等で、結局は、新車購入と同程度のコストになることもありますね。
料金や付随規定はレンタル会社によって違いますので、あくまでも仮定の話ですが、1年の期間で、月当たりのレンタル料金が250万円の環境・リサイクル機械をレンタルした場合ですと、レンタル料金が250万円/月 × 1年 = 3000万円になります。それ以外に損耗費5000円 × 500時間 = 250万円が発生し、トータル3250万円ぐらいのコストをみておかないといけません。
レンタル会社を利用する場合は、まず自走式土質改良機を貸出している会社を見つけること、そしてレンタルの期間とコストの算出と実施の如何を検討することが必要になります。
はじめて自走式土質改良機を使おうと考えているユーザーの方には技術支援やオペレーター付レンタル機のメニューもあるようですので、次のような環境・リサイクル機械の専門レンタル会社さんに相談してみると良いかと思います。
日立建機日本(REC) 株式会社三河機工 ユナイト株式会社 コマツ建機(レンタル21) 株式会社イマギイレ 株式会社大紀
中古機を導入する場合
中古の自走式土質改良機を購入するメリット・デメリットはどういったものがあるでしょうか?
中古機を購入する場合ですが、1.購入コストが抑えられる、2.在庫があれば即納車も可能という点がメリットです。
ですが、自走式土質改良機は数が少ない重機のため、中古機でも常に在庫が中古業者にあるとは限りません。
弊社の場合、取扱中の重機についてはHP上でご案内していますが、在庫がHP上にないという場合でも、まだあきらめないでお問合せいただきたいですね。
まだHPには掲載していないが買取の打診がある機械や、独自のネットワークで余剰車両を保有しているユーザー様等から手配が可能になることもありますので、まずは一度お問い合わせください。
当社の場合は、希望の商品をお探しします。お問い合せフォームに入力いただければご相談いただけます。
一方、中古の自走式土質改良機の購入におけるデメリットですが、自走式土質改良機に限らず、中古機は車両の使用状況やメンテナンス状況によって状態に差異があることがあげられます。
そのため価格だけではなく、整備・利用方法等で信頼のおける業者を選ぶことも大切です。
また中古の機械を購入する場合、車両の状態をしっかりとチェックすることが必要です。販売店に機械仕入の経緯や前ユーザー様の使用状況などの話を聞くことはもちろん、ご自身の目でもしっかりと確認することをおすすめします。
自走式土質改良機の購入の際には、付属のリモコンやラジコンの作動の有無、固化剤ホッパーの固着の有無は、どの機種でもチェックしていただきたいです。また、前のオーナー様により使い勝手向上のために改造されている機体が多いため、改造の有無の確認もおすすめします。
メーカー毎にチェックしていただきたい箇所は次の通りです。
日立製の自走式土質改良機の場合はパドルの摩耗の有無、パドルを受けるライナーの摩耗の有無、シャフトの軸受けベアリングのガタツキや混合室の状態をチェックしてください。
コマツ製の自走式土質改良機の場合はホッパー(波打ち、摩耗、すり減り、ゆがみの有無)や混合室の摩耗・ゆがみ、ロータリーハンマー(含むシャフト部)やカッターの摩耗がチェック箇所となります。
自走式土質改良機のメンテナンスはどのようなものになるでしょうか?
自走式土質改良機は比較的シンプルな構造をしていますが、設定どおりに改良土を生産するために、多くのセンサー類が搭載されています。
このセンサーに起因するトラブルが、自走式土質改良機の場合には深刻なケースとなることが多いですね。
自走式土質改良機は水分を含有した土を改良する現場が多く、固化材として石灰系やセメント系由来のものが利用されています。
配線部分に湿った土や固化材が不着した状態が続くと、配線の被覆箇所が腐食して断線し、数値の検測や動作ができなくなったり、異常を検知しないなどの事態を招く場合があります。
予防策としては作業後毎に清掃して土や固化材の除去を行う、また配線部分に土や固化材が侵入しやすい箇所は隙間を塞ぐ等、土や固化材対策をしておくことが有効です。
水分を多く含有する土をアルカリ性の固化材で処理する作業現場は特に腐食しやすい環境下ですので、電気系統以外に重機本体の腐食にも注意が必要です。
腐食防止には、日々の清掃が重要ですが、固化材の付着には不可避の現場もあります。付着した場合手作業ではがすか、サンドペーパーグラインダーで削り落とすことになります。
化学反応の力を利用して固化材を除去する方法として、酸性のトイレ用洗剤を利用して行う場合もありますのでぜひお試しください。
自走式土質改良機でもっとも消耗が早い部分は混合室です。摩耗が進むと他の部品への負担が増大し深刻なトラブルの引き金になることがあるので、使用後は清掃・整備を実施して定期的に目視で摩耗を確認し、消耗した部品は交換することが必要です。
コマツ建機の自走式土質改良機は、カッターとハンマーで土を叩き切りながら混合するため、砂礫等の混入の度合いが高い投入土でも下処理なしで作業を開始できます。しかし、大きな石や礫が多量の場合、混合室内にへこみができたり、シャフトが歪んでしまう可能性があります。
そのため、スクリーン等である程度の小石を取り除くなど、混合機への負担軽減策も必要です。
特に摩耗が激しいソイルカッターやロータリーハンマーは新品や導入開始時の状態を写真に残し、それを基準に摩耗度合を把握していくこともメンテナンスする上で有効です。
日立建機の自走式土質改良機は、大型の2本のシャフトにパドルが付いており、それぞれ異方向に回転して投入土を攪拌する仕組みですが、シャフトを支持するベアリングに負荷がかかります。特に動力を伝えているモーター側と反対のベアリングの損耗が早い傾向があります。
症状として異音がしてきますので、確実な確認が必要です。交換時期は数千HR単位と、交換する際はかなり高額コストとなります。
交換式のパドル自体は容易に交換が可能ですが、取り付けしてある台座に損傷範囲が広がると修理コストは高額になりますので気を付けてください。
固化材のホッパーも特に清掃が必要な部分ですね。
固化材は石灰系やセメント径のアルカリ性の物が使用されているため、コンプレッサー等で念入りに取り除くことが必要です。固化材がごく少量残っている状態で雨水が侵入し、ホッパー内部がカチカチに固まってしまったケースもあります。こびり付いて固まってしまった場合は、削るということになりますね。
日立建機の自走式土質改良機の固化材用ホッパーは、蛇腹式で折り畳んで格納しますが、清掃不十分のため使用時に蛇腹部分が伸びず、無理に伸ばして破損したケースもあります。
また、固化剤の供給方式はスクリューフィーダー型で、構造体がカバーの中に格納されて清掃に手がかかる場合があります。新型の土質改良機では点検・清掃口が増設されており改良されていますが、以前の土質改良機は清掃の度にボルトを外す必要があります。
コマツ建機の自走式土質改良機のホッパーは金属製なので丈夫ですが、ホッパー内には固化材が均等に落ちるよう手裏剣のように回転するフィン形状の供給部品が付いており、このモーターが油漏れする場合があります。交換の際はリンケージの反対側にある回転センサーを破壊しないように注意が必要です。
なるほど。メーカーごとの特徴を理解してメンテナンスするのが大切ですね。
土質改良機の取り扱い方、非常にわかりやすかったです。ありがとうございました!
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