石質破砕機が活躍している現場と破砕機のタイプとは
石質破砕機はどんな現場で使われるのでしょうか?
石質破砕機は、破砕機の中でも石・岩、コンクリートなどを細かく砕くための重機です。木質破砕機や土質改良機などの他の環境機械と同様、一般的にはあまり目にすることが少ないものの、建築や採掘・リサイクルの現場では不可欠な機械ですね。
採石場や石切り場では、山などから岩石を採取し、砂利などの製品にするために利用します。トンネル掘削では、工事で掘り出した岩石の製品化に加えて、減容化や廃棄のために破砕します。また、解体現場やリサイクル現場では、ビル解体や基礎解体で出るコンクリートガラなどの解体廃材の埋め戻し・再生骨材の製造・運搬のための減容化に石質破砕機を利用します。
石質破砕機の種類
石質破砕機にはどのようなものがあるのでしょうか?
大きな岩やコンクリートガラは、一度では目的の大きさに砕くことは難しいです。そのため、大きな塊を砕いて小さくする一次破砕や、一次破砕したものをさらに細かくしたり、粒の大きさを指す粒度を揃えたりする二次破砕、ふるい掛けといった作業を行います。
一次破砕で最も利用されているのが「ジョークラッシャー」と呼ばれる石質破砕機です。ジョークラッシャーは大きな岩などをとても効率よく破砕できますが、粒度を揃えることには適していません。弊社ではこういった中古のジョークラッシャーを多く取り扱っています。
二次破砕では、破砕材を壁にぶつけて角を取ることで粒度を揃える「インパクトクラッシャー」や、伏せたすり鉢状をしている「コーンクラッシャー」が用いられますね。
その他に、「ロールクラッシャー」という種類があり、これは軸で巻き込みながら破砕するタイプの石質破砕機です。ロールクラッシャーはアスファルトコンクリートなど、柔らかなものの破砕にしか適していません。
石質破砕機の中で代表的なジョークラッシャーは、国内では1990年代から自走式として生産された、比較的最近生まれた重機です。それ以前は、「大塚鉄工」「寿鉄工」「郷鉄工」「中山鉄工」などが製造していた定置式石質破砕機が利用されていました。
解体現場は移動の頻度が高く、大量のコンクリートガラの運搬は高コストになりますね。埋め戻しを行う際に、一度運び出して破砕したものを再度運び入れるよりも、解体の現場で破砕する方がコストを抑制できます。
採石場であっても、山を削るための石切り場が移動すると、破砕のために岩石の運搬が必要となります。こういった現場でも破砕機が移動できれば作業効率があがるため、現場のニーズが高まりました。さらに1991年に施工されたリサイクル法の後押しもあり、国内で自走式ジョークラッシャーが誕生したんですね。
コマツ建機のBR200をはじめ、初期の自走式ジョークラッシャーは、重機メーカーの走行体に定置式破砕機メーカーのジョークラッシャーを搭載したものでした。コマツ建機はそこでノウハウを蓄積し、独自に自走式ジョークラッシャーの製造を行うことで、BR380JGに代表される「ガラパゴス」シリーズの販売につながっています。
実は、弊社では、1987年頃に当時の解体業のお客様から、「コンクリートガラを現場で破砕したい」という声を多くいただいていました。そこで、日立建機製の走行体に郷鉄工製のジョークラッシャーと発電機を搭載することで、国産メーカーよりも早くオリジナルの自走式ジョークラッシャーを製作した、という経緯があります。
当時このような動きは全国各地で起こっており、鉄工所を持つ中小企業がお手製の自走式クラッシャーを製作していたようです。そのあたりのことは、以前にブログで触れていますのでご参照ください。
国内メーカーの自走式ジョークラッシャーは黎明期を過ぎて、各社がそれぞれの動きをしていきました。
キャタピラー三菱は、2000年代にMC230やMC220などの自走式ジョークラッシャーを販売しましたが、現在では製造を中止して、ヨーロッパ(サンドビック社)製ジョークラッシャーを輸入・販売しています。
日立建機は、2000年頃からヨーロッパのノードバーグ社製の自走式ジョークラッシャー・LTシリーズ(LT80、LT105、LT125)を輸入する方向にシフトしました。さらにその後は、日立建機の走行体にノードバーグ社(メッツォ)のジョークラッシャーを載せたZRシリーズ(ZR950JC)を販売しました。
こうして、現在国内メーカーが扱う自走式ジョークラッシャーを導入する場合、コマツ建機のガラパゴスシリーズなどの国内メーカーか、海外の正規輸入機か、どちらを導入するのかが、ユーザーにとって第一の課題になりました。
国内メーカーで大きなシェアを持つコマツ建機の自走式ジョークラッシャーは、使いやすく完成度の高い重機ですが、ヨーロッパ製よりも少し小さいですね。
対してヨーロッパ製の自走式ジョークラッシャーは、サイズも大きくパワフルです。しかし、部品調達面で少し不安があるようですね。
信頼のおける日本の輸入販売代理店ならば、交換頻度の高い交換部品は備蓄されています。しかし、あまり使われない部品はヨーロッパからの取り寄せになるので、修理に時間がかかってしまいます。
こういった事情から、国内メーカーのコマツ建機のガラパゴスシリーズや、ヨーロッパ製の破砕機を載せていても部品供給体制が確立している日立建機のZR950JCなどの国内メーカーの自走式ジョークラッシャーが選ばれていますね。
作業効率を左右する破砕室の摩耗
ジョークラッシャーでメンテナンスが必要な箇所はどこでしょうか?
自走式ジョークラッシャーは、大きな力で岩などをすり潰すため、機械自身の損傷の度合も高いですね。それでも、摩耗しやすい箇所はきちんと管理し、適切な状態のチェックを行っていれば、手遅れとなるような損傷を起こす前に修理できますよ。
最も摩耗・損傷しやすい部分は、石質をすり潰すための動歯と固定歯ですね。これらは硬い石質もすり潰せるよう、耐衝撃値・耐摩耗値の高いマンガン鋼を素材にしていますが、石質をすり潰していくうちに徐々に摩耗していってしまいます。
動歯・固定歯とともに破砕室を構成しているチークプレートも摩耗・損傷しやすい部分ですね。チークプレートは石質をすり潰すための部品ではありませんが、破砕室を囲ってすり潰される石質を支えているため摩耗しやすく、耐摩耗鋼で作られています。
石質を砕くコアの部分の破砕室内も摩耗しやすく、摩耗が進むと作業効率が低下してしまいます。摩耗残を日々チェックして、必要に応じて歯の上下を入れ替える、新しい部品に交換する、などの対応が必要となります。
石質を投入するホッパーから破砕室までの動線も摩耗しやすい部分といえます。ホッパーは摩耗もしますが、石質を投入する際に衝撃を受けてしまい、へこみや歪みが多く見られる部分ですね。そこまで耐衝撃値が高い素材は用いられていないので、凹み歪みを防ぐ補強や修理が必要となります。
グリズリーは、石質を振動させることにより、一定量を流しながら小さな石質を排除しますが、その過程で摩耗します。重度の摩耗の場合、グリズリーの歯が折れ、隙間が広がってしまいます。
グリズリーの上を流れてきた石質は、破砕室に流れ落ちますが、石質を破砕室内に落とし込むためにプロテクターが付けられています。落ちてきた石質が当たるため、プロテクターも非常に摩耗しやすいですね。プロテクターの素材の耐摩耗値はそれほど高くないので、思った以上に摩耗している可能性がありますよ。それにプロテクターの両サイドは摩耗しやすいので、要注意です。
そして動歯を動かすためのベアリング(ベアリングカバー)がプロテクターの裏側にあり、摩耗したプロテクターの隙間から細かな石質が裏側に入り込むことで、ベアリングカバーを損傷させてしまうこともあります。プロテクターは非常に摩耗しやすいので、摩耗を放置せず早めに交換しないといけません。
見えない箇所の摩耗は、なかなか発見しづらいですね。
動歯やチークプレートなど、目視可能な部品は摩耗の進行具合をチェックしやすく、部品の交換や修繕は比較的簡単に行うことができます。しかし、見えない裏側の摩耗が修理を要するほど進行すると、分解修理が必要となり、修理が高額になってしまう場合があります。
ベアリングやベアリングカバーなどは、摩耗したプロテクターの隙間から小さな石質が入り込んでベアリングカバーが摩耗し、ベアリングに影響を及ぼすことがあります。摩耗したベアリングでは、スムーズな動きは不可能になり、作業効率が低下します。
ロックシリンダーを採用しているジョークラッシャーの場合、ロックシリンダーの根元部分にあるロックピン・固定ブロックの摩耗も要注意です。摩耗によりガタつきが発生すると、ロックシリンダーが正しく働かない恐れがでてしまうんですよ。ロックシリンダーは、安全装置・破砕サイズ調整などを兼ねているので、ロックシリンダーの不具合はジョークラッシャーの稼働に大きく影響しますね。
動歯の裏手に、動歯を動かすための仕組みがあります。動歯は偏心プーリーが動歯を前後に動かしますが、その固定リンクが動歯と偏心プーリーを繋いでます。
関節に似た形状の固定リンクは、長時間の稼働による摩耗はさけることができません。大きな力を動歯に伝達しているため、リンクの摩耗による動作の悪化は、作業効率の低下につながるんですね。最悪の場合、動歯を動かせなくなってしまいます。
もしもジョークラッシャーを運転した際に、通常と異なる音が発する場合、リンクなど裏側にあるジョークラッシャーを動かす仕掛けの不具合を疑うことも必要です。早期の発見と修理をお勧めします。
自走式ジョークラッシャーはある意味摩耗の塊なので、あらゆる部分に摩耗の可能性があるんです。摩耗の進行が速いのはどういった部品なのかを知っておくと、摩耗が深刻になる前に補修、修理や部品交換などの手がうてますよ。それに、中古のジョークラッシャーを選ぶときにも、部品の摩耗度合を見るのは大切なチェックポイントですね。
負荷を掛けずに効率よく!自走式ジョークラッシャーの
上手な使い方
どうやったらジョークラッシャーを長持ちさせられるんでしょうか?
自走式ジョークラッシャーは、稼働の際の自身への衝撃や振動などの負荷が大きい重機なので、あらゆる箇所が摩耗しやすく、負荷をかけすぎると故障にもつながります。
そのため、自走式ジョークラッシャーを長持ちさせるには、無駄な負荷をかけないよう取り扱うことがキーポイントになってきますね。
まずは、投入する石質のサイズに注意していただきたいですね。処理能力は自走式ジョークラッシャーの規格やメーカーによって違ってきますが、大きすぎる塊を投入しても、目的の大きさへ破砕できないどころか、重機への負担が大きいので、故障の原因になってしまいます。
お使いの自走式ジョークラッシャーについて、どの程度の大きさの石質ならば目的のサイズに破砕できるのかといった処理能力を確認することが必要ですね。
石質の入れ過ぎにも注意が必要です。破砕室内に投入される石質が多すぎると、作業効率は低下して、重機への負担も大きくなってしまいます。
最悪の場合は破砕室が破損してしまう恐れもありますので、破砕室は満タンの状態にしないように投入量を調整することが大切です。比較的新しいタイプの自走式ジョークラッシャーには、破砕室内の石質の量をセンサーが感知するものもありますが、一番重要なことは、破砕室内を確認する場合は「必ず」重機を停止させることです。
効率的な破砕についてはブログの『効率的なクラッシャーの使い方と破砕事例』に詳しく書いてありますので、ぜひ参考にしてください。
解体現場などでコンクリートを破砕する場合、どうしてもその中に鉄筋が混在してしまいますね。長過ぎる鉄筋が残っていると、グリズリーに絡まったり、破砕室内で引っかかったり、排出ベルコンをきずつけたりすることがありますので、目視で確認できる長い鉄筋は破砕前に除去していただきたいですね。
含水率の高い石質を破砕すると、土や砂などが破砕歯の溝に付着して埋めてしまうことがあります。溝が埋まると破砕効率が低下しますので、雨天時の破砕は避けて、石質の乾燥後に破砕を行うことが必要です。
いずれにしても破砕前の下処理は、長くジョークラッシャーを使い続けるためのカギとなります。少し面倒に感じるかもしれませんが、破砕効率や製品精度の向上、故障の防止に役立ちます。
自走式ジョークラッシャーのメンテナンス方法
自走式ジョークラッシャーを良好に長持ちさせるためには、もちろん日常的なメンテナンスも必要だと思いますが、どのようなことが必要でしょうか?
はい、まず第一に洗浄・清掃をまめにして欲しいですね。特に破砕歯の溝に詰まったり不着している砂や土は、必ず落とすようにしてください。特に解体現場で稼働している機械は、アルカリ性のコンクリートによって電気系統の配線の被覆が腐食する恐れがあり、断線による電気回路の誤作動を防ぐためにも清掃は重要です。
また、しっかりとグリスアップを行うことで、経年による摩耗進度を緩やかにできますね。特にベアリングやリンクまわりの摩耗は、動きが悪くなって破砕効率が悪くなりますし、修理費用が高額になってしまう可能性があります。スムーズに動かし続けるために、グリスアップは毎日行ってください。
日々の点検で摩耗度合いのチェックをしてください。自走式ジョークラッシャーは摩耗しやすい重機なので、摩耗の状態によって、破砕歯であれば上下を反転させたり、プロテクターであれば交換したりと、早めの対処を心掛けましょう。
自走式ジョークラッシャーの中古機械を選ぶポイント
中古の自走式ジョークラッシャーを導入する際、どの箇所を確認すればよいでしょうか?
中古の自走式ジョークラッシャーを購入する際は、必ず投入ホッパー、グリズリー、プロテクターの摩耗の状態を確認していただきたいんですよ。
もし投入ホッパーが補強されていたら、耐摩耗鋼で補強されているか確認してください。通常の鉄板で補強されていると、すぐに摩耗してしまうこともあります。
次に、破砕室の摩耗の状態をチェックします。チークプレートがすり減っていると、下の方がえぐれてきます。特に下の方は見えにくいので、よく確認してくださいね。また、破砕歯は反転して利用できるか否かもチェックするポイントです。
プロテクター周辺のベアリングやベアリングガバーの状態は要チェックです。プロテクターが摩耗していなくとも、ベアリングカバーなどの部品が摩耗しているかもしれません。また、動歯を動かすための偏心プーリーについているベルトに亀裂がないかも確認しましょう。
そして、ロックシリンダー式の場合は、シリンダーの油漏れや、きちんと隙間調整ができるかを実際に動かして確認してください。カバーを外さないとロックシリンダー周りを確認できませんが、ボルトを数本外すだけで簡単に取り外すことができます。その手間を面倒臭がらず、快く外してくれる中古重機販売業者で購入する方が安心ではないでしょうか?
実際に自走式ジョークラッシャーを動かして、リンクのガタつきがあるか動作音を確認してください。通常はきれいな機械音・回転音が聞こえるのですが、リンクの摩耗によりガタつきが起きていると、「カンカン」といった異音がするんです。
自走式ジョークラッシャーは毎日のグリスアップが必要なため、グリスアップを行う箇所にはグリスチューブが取り回しされています。グリスチューブがきちんと繋がっているか、チューブをたどって確認しましょう。グリスチューブは両サイドにあるゴムの部分を上げて下から覗き込めば確認することができます。
その他に排出用ベルトコンベアは、混在した鉄筋などにより傷ついている場合があるので、ベルトコンベアをゆっくりと回して、傷みなどからくる裂け目や欠け、補修跡がないかをよく確認してください。